サウナで「ととのう」。一度は耳にしたことがある言葉ですが、あの独特の多幸感が、体の中で何が起きた結果なのかを説明できる人は少ないかもしれません。
私は庭にバレルサウナ(totonoü 2.2m・Tylo 6.6kW)を設置し、週2回のサウナを1年以上続けてきました。しかも、サウナ専用ウォッチ「サウォッチ3」で自律神経の状態を数値で計測しながらです。
その結果、はっきり見えたことがあります。「ととのう」は気分でも思い込みでもなく、自律神経の振れ幅として数値に表れるということです。
この記事では、まず私が実際に計測したデータをお見せしたうえで、その裏側にある仕組みを解説します。なお私は医師ではないため、医学的な内容は書籍や研究の出典を示しながら紹介します(記事末尾に参考文献を記載しています)。
【実測】自律神経の切り替えは、数値で見える
サウォッチ3にはStrain(ストレイン)という指標があります。心拍データから自律神経の状態を推定し、7段階で表示する機能です。これを使うと、サウナのセット中に自分の自律神経がどう動いているかがリアルタイムで見えます。
私の計測結果を整理すると、こうなります。
| シーン | 心拍数 | Strain(7段階) | 体の状態 |
|---|---|---|---|
| サウナ室(後半) | 約130bpm(安静時の約2倍) | 5〜6 | 交感神経が最大に振れている |
| 水風呂 | 急降下していく | —(Slopeが0に近づく) | まだ興奮状態が続く |
| 外気浴(直後) | 安静時+20〜30 | 1〜2 | 副交感神経が優位に切り替わる |
サウナ室で5〜6まで振れたStrainが、外気浴に移って数分で1〜2まで落ちる。この落差が、いわゆる「ととのい」の正体だと私は理解しています。数字が大きく動いた日ほど、あの浮遊感が深い——1年間データを取り続けて、これはかなり明確な相関だと感じています。
逆に、Strainが7まで行ってしまった日(無理をしすぎた日)は、外気浴でうまく落ちきらず、ととのいも浅くなりがちでした。「限界まで我慢したほうが深くととのう」わけではないのです。
この数値の読み方や計測方法は、こちらの記事で詳しく解説しています↓

そもそも「ととのう」とはどんな状態か
「ととのう」とは、サウナ・水風呂・休憩(外気浴)という流れを繰り返すことで得られる、心身が深くリラックスしながら、同時に感覚が鋭敏になっている状態を指します。
「体の輪郭がなくなるような浮遊感」「幸福感に包まれる」と表現されることが多く、私自身も初めて深くととのったとき、景色に体が溶けていくような不思議な感覚を覚えました。
自宅サウナならではの実感を付け加えると、平日に仕事で頭がぐるぐるしている日でも、1セット終えた外気浴で「考え事の輪郭がぼやけて、どうでもよくなる」瞬間が訪れます。この感覚が、後述する脳内物質の働きと結びついているのだと、仕組みを知ってから腑に落ちました。
仕組み①|鍵を握るのは自律神経の切り替え
ここからは、先ほどのデータの裏側にある仕組みです。加藤容崇医師の『医者が教えるサウナの教科書』などで解説されている内容をもとに整理します。
自律神経には、体を活動的にする交感神経と、リラックスさせる副交感神経があり、両者がバランスを取りながら身体機能をコントロールしています。サウナのセットでは、これが大きく振り子のように動きます。
- サウナ室:交感神経が優位に。高温という環境ストレスに対処するため交感神経が活発になり、心拍数と血圧が上昇します。我が家のバレルサウナ(室温90〜100℃)でロウリュをすると、心拍数が一気に130近くまで上がります。これがまさにこの状態です
- 水風呂:交感神経がさらに優位に。急激な冷却という別のストレスで血管が収縮し、体は熱を逃がさないよう働きます。この時点でも、体はまだ興奮状態にあります
- 外気浴:副交感神経へ劇的にスイッチ。極限状態から解放され、体が「危機が去った」と判断すると、抑制されていた副交感神経が一気に優位になります。ここが「ととのう」の本番です
この交感神経から副交感神経への急激な切り替えが、ととのいを生む最大の要因とされています。冒頭のデータでStrainが5〜6から1〜2へ落ちていたのは、まさにこの切り替わりが数値に表れたものです。
自宅サウナの良さは、この切り替わりをじっくり観察できること。サウナ室から外気浴チェアまで数歩という環境なので、混雑や移動に気を取られず、体の変化だけに集中できます。施設では意識しづらい「落ちていく感覚」を、毎回はっきり感じ取れます。
仕組み②|脳内で起きている化学変化
自律神経の動きと並行して、脳内では複数の物質が分泌されると考えられています。
- β-エンドルフィン:ストレスから身を守るために分泌される物質。鎮痛作用や高揚感をもたらし、ランナーズハイに近い感覚を生むとされています
- オキシトシン:「幸せホルモン」とも呼ばれ、安心感や幸福感に関わる物質。リラックス状態で分泌が促されると考えられています
- セロトニン:精神の安定に関わる神経伝達物質。副交感神経が優位なリラックス状態で分泌が整うとされています
- アドレナリン・ノルアドレナリン:サウナと水風呂で交感神経が優位になる際に分泌される興奮系のホルモン。頭が冴える感覚につながります
ポイントは、外気浴のタイミングです。体は副交感神経の働きで深くリラックスしているのに、血中にはアドレナリンがまだ残っている。この「体はリラックス、でも頭はスッキリ」という矛盾した状態が、ととのいの独特さの正体だと説明されています。
そしてこの状態は長く続きません。だからこそ、外気浴の最初の数分をいかに邪魔されずに過ごせるかが勝負になります。自宅サウナの価値は、まさにここにあります。
仕組み③|血流の変化がもたらすもの
サウナ・水風呂・休憩のサイクルは、全身の血流にも大きな変化をもたらします。
- サウナ:高温で血管が拡張し、血流が増加
- 水風呂:低温で血管が収縮
- 休憩:収縮した血管が再び拡張し、血液が一気に全身を巡る
この拡張と収縮の繰り返しが血行を促進するとされ、体が内側からポカポカと温まる心地よさにつながります。
個人的な体感として、デスクワーク中心で肩まわりが張りやすかったのですが、自宅サウナを習慣化してから軽くなったように感じています(あくまで私個人の実感で、効果を保証するものではありません)。
仕組みから逆算した「ととのうための3原則」
ここまでの仕組みを踏まえると、やるべきことは3つに集約されます。
① 自律神経の「振り幅」を大きくする。サウナで心拍をしっかり上げ、水風呂でしっかり冷やす。ただし限界までは行かないこと(私の基準はStrain 5〜6、心拍130bpm)。振り幅は大きいほど良いが、振り切ると逆効果です。
② 外気浴で副交感神経への切り替えを邪魔しない。体の水分を拭き取る、寒すぎる日はポンチョで保温する。せっかく作った振り幅を、寒さや不快感で台無しにしないことが重要です。
③ 五感を整える。ロウリュの香り、BGM、椅子の姿勢。リラックスを深める環境要素は、副交感神経への切り替えを助けてくれます。
これらを具体的な手順に落とし込んだ「実測データで検証した12のコツ」を別記事にまとめています。心拍数管理、アロマ選び、外気浴の姿勢など、今日から使えるテクニックです↓

安全に楽しむために|必ず守ってほしいこと
ここまで見てきた通り、サウナは体に大きな負荷をかける行為です。楽しむために、以下は必ず守ってください。
- 飲酒後・二日酔いのサウナは絶対に避ける(脱水と血圧変動が重なり危険です)
- 入浴前後・途中の水分補給を徹底する
- 「我慢」しない。時間で区切るのではなく、体の反応(心拍数など)を基準に切り上げる
- 心臓や血圧に関わる疾患がある方、妊娠中の方、通院・服薬中の方は、必ず事前に主治医に相談してください
- 体調が悪い日、睡眠不足の日は無理に入らない
私自身、データを取るようになって「入らないほうがいい日」も分かるようになりました。数値管理は、深くととのうためだけでなく、安全に続けるためのブレーキとしても役立っています。
よくある質問(FAQ)
Q. ととのわないのはなぜですか?
A. 自律神経の振り幅が足りていないか、外気浴で切り替えを邪魔されているかのどちらかが多いようです。特に「水分を拭かずに外気浴で寒くなっている」「外気浴が短すぎる」はよくあるパターンです。
Q. 長く入ったほうが深くととのいますか?
A. 私のデータでは、そうとは言えませんでした。Strainが7(行き過ぎ)まで振れた日は、外気浴でうまく落ちきらず、ととのいも浅くなる傾向がありました。
Q. 外気浴は何分がベストですか?
A. 時間よりも「体の反応」で判断するのがおすすめです。心拍が安静時+20〜30程度まで落ち着き、体が冷え始める前に切り上げるのが目安になります。
Q. 自宅サウナのほうがととのいやすいですか?
A. 私の実感では圧倒的にととのいやすいです。サウナから外気浴チェアまで数歩、混雑ゼロ、温度も香りも自分好み。副交感神経への切り替えを邪魔する要素が何もないからだと考えています。
まとめ:「ととのう」は数値で追える身体反応だった
- ととのいの正体は自律神経の急激な切り替え。私の計測ではStrain 5〜6 →(外気浴)→ 1〜2という落差として表れた
- 「体はリラックス、頭はスッキリ」という矛盾した状態が、あの独特の感覚を生んでいる
- 限界まで我慢しても深くはならない。振り幅を作り、切り替えを邪魔しないことが本質
仕組みが分かると、サウナの入り方一つひとつに意味が見えてきます。そして数値で追えるようになると、「今日はなぜ良かったのか」を再現できるようになります。ぜひ、安全に注意しながら、あなただけのととのいを追求してみてください。
自宅バレルサウナという選択肢に興味がある方は、我が家の導入記録もあわせてどうぞ↓

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参考文献
- 加藤容崇『医者が教えるサウナの教科書』ダイヤモンド社, 2020年
- Laukkanen, J. A., et al. “Cardiovascular and Other Health Benefits of Sauna Bathing: A Review of the Evidence.” Mayo Clinic Proceedings, 2018.
※本記事は医学的な診断・治療を目的としたものではありません。筆者は医療従事者ではなく、記載の体感はあくまで個人の感想です。健康上の不安がある方は医師にご相談ください。





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